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『労働と人生についての省察』

『労働と人生についての省察』 

 

『「聴く」ことの力』

という本を読んだときに、この著書の引用があり、

その言葉がとても気になったので、読んでみた『労働と人生についての省察』。

タイトルだけだと、絶対に手に取らない本です。著者も全く知らない人です。

本というのは、その本で完結することは、なかなかなく、

・面白かったから、この著者のほかの本も読んでみよう

・引用されていた、この本も読んでみたい

・ここに書かれていること、本当かな?調べてみよう

など、次の本につながることが多いように思います。

本は、未知の本へのバトンを渡す役目もあるのかもしれません。

 

さて、この本ですが、著者のシモーヌさんは、フランス人の女性です。

1909年に生まれ、34歳でなくなっています。

裕福な家庭に生まれ、高等師範学校を卒業後、中学校の哲学の教師として職を得ます。

当時のエリートだと思います。そんな彼女は、教師をしながら、労働者と酒を酌み交わしたり、

失業者の援助をしたり、組合運動に没頭したりしていました。

通常の教師(おそらくエリート)がすることではないのだと思いますが、

「(前略)彼女はあまりにも、人間の不幸という問題に取りつかれていた。」。

その考えが高じて、労働者に話を聴くだけではなく、実際に自ら工場で働き、

労働者と同じ生活をおくることを選択します(約1年間。後に教師に復職)。

そして、その経験をまとめたものが、この本です。

生来が病弱であった彼女に、単純作業の重労働である作業の苦しさ、人として扱われない屈辱・・・。

その体験を克明に記録した彼女の心中や手紙の中から気になった部分をそのまま抜き出します。

 

「一般的に言って、こういう生活をしていると、一ばんしりぞけがたい誘惑は何かというと、まったく考えるのを

放棄してしまいたい誘惑よ。それだけがただ一つ、これ以上苦しまないですむ方法であることが、

わかりすぎる位よくわかるの。」

「一たん機械の前へ立ったら、一日に八時間は、自分のたましいを殺し、思考を殺し、感情を殺し、

すべてを殺さなければならないの。怒っていようと、悲しかろうと、いやであろうと、怒りも悲しみもいやな気持ちも

全部呑みこんで、自分の心の奥底に押しこんでしまわなねばならないの。」

「(工場が休みの)ただ土曜日の午後と日曜日にだけ、わたしにも思い出や、思考の断片がもどってくる。」

「(前略)知性を低下させるものは人間全体を下落させるのです。」

「苦しまないための唯一の方便は無感覚の中に沈んでしまうことです。」

「不幸の第一の結果は思考が逃亡を欲しているということであるから。」

「才能のある人間は、物語のおかげで、そして想像の力で、ある程度外から判断し描写することができる。」

「こうして思考は収縮する。」

「人は魂を工場内に持ち込んでそこで苦しむ。夕方この疲労が魂を否定してしまったようで、余暇の時間は空虚である。」

「それを変えるためには、まずそれを知らなければならない。」

「「不幸がわたしの肉体とたましいの中に入り込んできたのです。」」

 

結局、工場勤務によって彼女が得たものは何だったのか。

彼女の友人には、工場勤務を強いられる人の状況を無理に作り出すことは、間違っているのではないか

(工場などで働くのは止めるべきだ)と諭した人も多かったようです。

それでも、その中に身を置くことでしか得られないものはあると考え、実際に得てきた。

多くの労働者は、同じことを感じていても、文字にする術を知らないのであり、

それを文字に残す、人に訴えることができたのは彼女の功績だったのでしょう。

では、彼女、個人としての人生としての工場勤務は何をもたらしたのかと考えたときに、

彼女の理想の世の中を追い求めるために自分ができることをしたいと願った結果の行動だったのではないかと

思うのです。過酷な労働が例えば彼女の寿命を短くしたとしても、真理を追究したかったのかなと感じました。