大阪・梅田のコワーキング図書館。月会費5,800円。コワーキングスペース、住所利用、電話取次ぎも。
TwitterFacebookGoogle
大阪市北区西天満4丁目11-8-701(MAP)

06-6809-5827(お問合せ)

平日
13~22時
土日祝
13~20時
休業
月曜日/祝日の翌日

『生きてるだけで、愛。』

『生きてるだけで、愛。』 本谷有希子


 

会員さんから借りて読みました。

なんとなく浮上できなかった時期にこのタイトルに惹かれて、「貸して下さい」と。

太宰の『ヴィヨンの妻』も大好きなのですが、これも底のほうにいるときに読むと、

生きているだけでいいんだと思える本です。

自分の悩みにどうしようもなくなったときには、人間は自分より不幸な状況の人を見て、

自分はまだ大丈夫と思えるものだと思うのですが、現実社会でこれをすると嫌な人間ですし、

さらに、自分の悩みが一番大変だと思ってしまうものだとも思うのです。

そんなときに小説を読むことで、少し余裕ができるのでしょうか、こんなひどい状況じゃないよね、と思えるのです。

読むことでゼロベースに戻すことができます。

 

小説の表紙は、葛飾北斎の富岳三十六景の波が富士山にザッパ~ンとかかっているあの有名な絵です。

それが、ピンク色で、富士山から噴火するようにハートマークが出ているのが面白いです。

 

鬱で過眠症という主人公の寧子とその彼氏で同棲相手の津奈木との風変わりな日常が描かれています。

寧子は、バイト先で一緒に働いていた男性(彼氏とは違う男性)にデートに誘われて、

「「こんな冴えないやつにすらなんとかなるかもと思われてるんだ」と思った瞬間から、鬱に入った。」

と周期的に鬱になるようですが、この発想が面白く、多くの女性が一度は思うことだろうなと思ったりしたものです。

 

物語は、津奈木の元彼女が現れてから、大きく展開します。

この元彼女も強烈な個性の持ち主で、寧子を無理やり現実の世界へと引っ張り出します。

引っ張り出された現実は、寧子を温かく包んでくれる良いものだったのにも関わらず、

あることがどうしても納得できずに、その現実からも目を背けてしまいます。

 

ラストシーンは、冬の屋外で裸になった寧子が津奈木に向かって

「「あんたが別れたかったら別れてもいいけど、あたしはさ、あたしとは別れられないんだよね一生。

(中略)いいなあ津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」」

というどうしようもない気持ちのもっていきようもないセリフ。

「あたしと同じだけあたしに疲れてほしいってのはさ、やっぱ、依存?」」

 

それでも、部屋に帰ってきてからの津奈木の優しい一言で寧子の中に決心が生まれた。

どうしようもないような内容ですが、読後感は悪くなく、スッキリしています。

 

ちなみに表紙の富岳百景の絵は、五千分の一秒のシャッタースピードで撮った写真が画の構図と寸分違いないそうです。

「あたしたちが一生ずっとつながっていることなんかできっこない。せいぜい五千分の一秒。」